2020-03-19

911シリーズ5代目の大変革。最初の水冷911、タイプ996の特別バージョンGT3を語る!

「過剰品質」なんていう言葉があります。「価格に見合わない高品質」という意味で使われますが、これは特に製造業などでは商売によくない影響が出るとされています。



息の長いプロダクト




「過剰品質」なんていう言葉があります。「価格に見合わない高品質」という意味で使われますが、これは特に製造業などでは商売によくない影響が出るとされています。



いいものを作ってるんだからいいじゃないか、と思われるかも知れません。でも、いいものを作ろうとコストをかければもちろん原価が上がるわけで、それで売値が変わらなければこれは単純に考えても儲からないということになります。さらにその製品の品質がよくなって耐久性が高くなると「なかなか壊れないので次が売れない」ということになります。メーカーにとって過剰品質は、自分で自分の首を絞めてしまうことになるのですね。





こういう生産の現場での過剰品質のほかに、例えば「プロダクトとしての過剰品質」というものもあるように思います。例えばカメラの世界では、ライカのレンジファインダーカメラ。M型ライカが発表された時、そのあまりの完成度にこれはもう対抗できないということで、当時の日本のカメラメーカーが一斉にレンジファインダーから撤退して一眼レフに走ったといわれます。しかしM型を作ってしまったことで、逆にライカはその後一眼レフの流れになかなか乗れなかった、という見方もできます。



BMWのモーターサイクルにとってのフラットツインエンジンも、これに似た感じかも知れません。エンジンと駆動系を含めた構成があまりにも完成度が高かったので、非常に息の長いモデルになってしまったのですね。それでBMWが直列四気筒の新しいモーターサイクルに移行しようとした時に、永年のフラットツインのファンが「こんなのBMWじゃない」と受け入れなくて、仕方なく新しい設計でフラットツインを継続しなければならなかったわけです。



フォルクスワーゲンのタイプワンも、ゴルフが出た後も世界各国で作られ続けましたよね。あまりにも優れたプロダクトは、その後メーカーに自由な新型を出させてくれなくなる。そういうことは多々あると思います。



911という大ネーム




ポルシェにとっての911もまた、そうなんではないでしょうか(長い前置きでした。申し訳ないです)。



そもそも930が出たあとも「911」という名前で呼ばれている辺りから、既に911というモデルの「重さ」があったように思います。もともと911は開発当初901型でしたが、プジョーが「三桁で真ん中がゼロ」の数字の車名を全部押さえていたので911になった、とされています。だとすると930型が出れば930、964型が出れば964になって良さそうなものなのに、ずっと911を踏襲していますよね。



これはもしかしたら911という名前のブランディングというか、メーカーがそのイメージを定着させたかったのかなあと思います。911はあの顔で、フラットシックスで、RRで。結果それがとても上手くいったので、その後「次世代はこれにしよう」と出してきた水冷・V8・FRの928が受け入れられず、やはり「ポルシェは911」ということで930にそっくりな964が開発されたんじゃないでしょうか。





それでもやはりポルシェは進化しないといけないので、964では当初RRをやめてAWDのカレラ4を、ということになったんでしょうね。でも「やっぱ911はRRじゃなきゃ」っていう声があって、あとでカレラ2を出した。そしてその次の993では思い切って顔立ちをちょっと変えてみた。ついでにリヤサスペンションも変更してみた…。



この頃のポルシェはそういう緩やかな、段階を追ったモデルチェンジで911をアップデートしていこうという流れになったのかなあ、と感じるんですね。そして996。ついにエンジンが水冷になります。ここまで空冷で来られたのがすごい、ともいえるタイミングです。



996という変革、そしてGT3という特異点




初代から数えて実に5代目の911です。さらにワイドに、より現代的になった996は、実は993に比べて50kg程軽量化していて、にもかかわらずボディ剛性は大幅にアップしています。





そして今回ご紹介する996はただの996ではありません。初期型のGT3です。もともとホモロゲーションモデルとして限定で生産されたモデルで、3.6リッターの水冷・水平対向6気筒DOHCエンジンはNAながら360ps/7200rpm、37.6kg.m/5000rpmの大パワーを発生します。それに対して車重は1350kgですから、まさにロード・ゴーイング・レーサーですね。



トータルで1889台しか生産されなかった、特別な996型911・GT3。出会ってしまった時が運命の時なのかも知れませんよ。



[ライター/小嶋あきら]

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