2020.04.15

英国車の匂いを濃く伝える旧き佳きジャガー。6リッターV12、XJSの魅力

私事で恐縮ですが、子供の頃うちにあったクルマはマツダのキャロルでした。排気量360cc、大人が四人乗ると坂道で止まってしまう、というなかなかのやつでしたが、あの時代は「クルマがある」と言うだけで嬉しかったものです。その次にうちに来たのは日産サニー1000、そのまた次はトヨタカリーナ1600。排気量と共に車内は広く、ゆったりとした感じになります。



6000ccという排気量




ぼくは小学校に入って間もない頃でしたが、子供心に「1600は1000よりもいいのだな、2000はきっともっといいに違いない」なんて感じていました。そう、その当時自分が知っている世界の中で一番大きなクルマは「2000」だったのです。そしてその数字がエンジンの排気量だということを知ったのはさらに数年あとのことでした。



さて、今回ご紹介させていただくジャガーXJSのV12クーペは6000ccです。あの頃のぼくが聞いたらひっくり返りそうな排気量ですね。



ジャガーというメーカーは




ジャガーは、もともと「スワロー・サイドカー・カンパニー」というサイドカーのメーカーでした。1922年、設立された当初は名前の通りサイドカーを造っていたのですが、程なく自動車のボディを手がけるようになります。いわゆるコーチビルダーですね。1927年にはオースチン・セブンのシャーシにスワローが製作したアルミ製のボディを架装した「オースチン・セブン・スワロー」を発売します。「美しいものは売れる」というポリシーで、エクステリアの美しさを追求したのですね。今で言うと光岡自動車みたいな感じでしょうか。



その後、社名を「スワロー・コーチビルディング・カンパニー」に、次いで「SSカーズ」にと変更します。そして1935年、エンジンとシャーシも含めてオリジナルの「SSジャガー21/2」が登場します。ここが「ジャガー」という名前の自動車のルーツですね。





第二次世界大戦が終わった年。SSカーズはジャガー・カーズに社名を変更します。「SSカーズのSSってナチスの親衛隊っぽくね?」っていう意見があったからと言われています。とんだ風評被害といいますか、ふとトヨタのISISを思い出してしまいました。



1948年に発売されたXK120が、美しいスタイリングと高性能、他社の競合車種よりも安価な価格で、大ヒットします。このモデルが「高性能な高級車」という今のジャガーのイメージを作ったと言われています。さらに1950年代にはジャガー・カーズはモータースポーツに参入します。耐久レースの世界、ル・マン24時間レースなどで、その活躍は2000年代まで続きます。1988年に総合優勝したシルクカット・ジャガー、まだシケインが設けられていなかったユノディエールの直線を350キロオーバーで走り抜けていくあの姿が、今も強く印象に残っています。



英国車の魅力




英国車というと、例えばツィードの服を着て姿勢正しく粋に乗るイメージみたいなのって有りますよね。伝統とか格式とか、「バンプラはメルセデスよりも格が上」みたいなそういう世界というような。



一方でロータスみたいな小規模のレースカーやキットカーのメーカーがしのぎを削っていたとか。二輪の世界でもトライアンフやノートンが世界のレース界をリードしていた時代があったり、今もマン島TTレースが続いていたり、そういうモータースポーツに対する熱さもまた、英国車にはあるような気がします。



ハイパフォーマンスとラグジュアリー。モーリス、ローバー、オースチン、MGなんていうような英国車メーカーが消えていく中で、インド資本の傘下に入りつつも生き残っているジャガーは、いまや貴重な英国車の匂いを伝える伝統のブランドです。



XJS 6.0 V12クーペについて




XJS 6.0 V12クーペが登場したのは1991年、ジャガーがフォードの傘下に入って間もない頃です。1975年にデビューしたXJ-Sの後継車で、スタイルはかなりの部分で踏襲していますが、ボディパネルの40%が新しくなったと言われています。V型12気筒SOHCエンジンは5,344ccでしたが、1993年モデルからは5,992ccに拡大されました。300ps/5,350rpm、48.4kgm/2,850rpmのパワーを発生します。トランスミッションはGM製の電子制御4速ATです。



英国のEU離脱が騒がれていますが、欧州はやはり一つの文化圏と言っていいと思います。しかし国々それぞれのカラーというのはクルマのキャラクターにしっかりと表れますよね。フランス車、ドイツ車、イタリア車、英国車。どれもそれぞれ魅力的です。





最近は資本提携や統合が進んで、例えばランボルギーニがアウディの信頼性を得る一方で乗りやすくなってしまったとか、そういう話も聞きます。欧州車でも、国ごとのキャラクターというのは薄くなっていっているのかも知れません。そして登場した時期を考えると、XJSはジャガーが英国車のテイストを濃く残していた時代の最後のモデルと言っていいのではないかと思います。



さらに、燃費や排出ガスなどの環境性能を重視して、時代はエンジンのダウンサイジングへと向かっています。小さな排気量に過給器を組み合わせて効率を上げたエンジンは、確かに良くできていてパワフルです。



しかし、大排気量のテイストというか抗いがたい魅力というものはやっぱりあって、さらにそれがV型12気筒ともなればこれはもう魔力に近いものでしょう。この先、もうきっと出てこない、恐竜のようなエンジン。6リッターV12を愉しめる幸せな時代は、もうあまり長くないのではないでしょうか。



ジャガーXJS 6.0V12クーペ。英国車の、ジャガーの魅力を味わうのは、きっといまです。



[ライター/小嶋あきら]

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