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二台のポルシェType991。マニュアルか、それともPDK(デュアルクラッチ)か。美しい人生の迷い道くねくね

「おはよう、フェルプス君」というとスパイ大作戦ですが、あのテレビドラマの原題は「ミッション・インポッシブル」でした。って、古い話です。1966年に始まったそうで、ちょうどぼくと同い年……。

スポーツカーにATなんて。昔はそうでしたよね

これを下敷きにした映画「ミッション・インポッシブル」が公開されたのが1996年。当時世間には、その五年前にできたオートマチック限定免許の若者が増えていたのですが、彼らを「ミッション・インポッシブル」と呼んでからかったのもいまでは懐かしく美しい(のかな?)思い出ですね。

たぶん1980年代くらいまで、スポーツカー好きの人たちは当然マニュアル・トランスミッションのクルマを選んでいました。
「オートマチックのスポーツカー? そんなの邪道、ダサダサっしょ」
っていうのがごく一般的な反応だったと思います。

実際、マニュアルのシフト操作は「クルマを操っている」という実感がありました。クラッチを繋ぐ一瞬、足先に感じる「何か回転しているものを押しつけているな」という感触だったり、ギヤをシフトするたびに表情を変えるエンジンの面白さだったり、マニュアル・トランスミッションならではの趣みたいなのが感じられました。皆さんそうじゃないですか?

さらにそれをスムーズに運転するには「ちょっとした熟練を要する」というところがまた、楽しかったように思うんですよね。
「オートマチックなんてあーた、誰が乗ってもスムーズに走っておもしろくもなんともないでしょ」っていうクルマ好きだけではなくて、ごく普通のおばちゃんでも「なんや左足が暇で落ち着かへんわぁ」なんて言ってましたし。

ちょっとざわつくティプトロニックの登場

そんな中、いま思うとちょっと風向きが変わってきたのが、ポルシェ911(type964)のティプトロニックが登場した辺りだったように思います。

「ティプトロニック? なにそれなんか凄そう。ナビファイブみたいなもん?」

「こらっ、一緒にしたらバチ当たるで!」

なんて、周囲がちょっとざわついてたんですよね。実はティプトロニックはわりと普通のトルコン式ATに電気制御がついただけのもので、ナビファイブの方が中身としては攻めた奴だったんですが。

とにかく「ポルシェが採用したくらいだから、オートマチックもなかなかいいのかも知れない」なんて空気になったのは感じました。

そんなこんな言ってるうちに技術はどんどん進んで、いまやポルシェのPDK(デュアルクラッチ)なんてもう思いっきり賢くなってしまいました。もはや人間がヒール&トゥだなんだ言ってても太刀打ちできないというか、とにかく「速く走る」ことにかけてはマニュアル・トランスミッションでは歯が立たないでしょう。だいたい世界で一番運転が上手なF1レーサーの人たちでもいまはツーペダルのオートマチックを使ってるわけですから、こと「クラッチ」とか「変速」といった作業は圧倒的に賢く上手になってるんですよね。

とてつもなく贅沢な二者択一

さて、「こんな時代にポルシェに乗る」ということを考えたときに、選択するのはマニュアル・トランスミッションか、それともオートマチック・トランスミッションなのか、はたして正解はどちらなのかということをふと考えてしまうわけです。

ここに二台の魅力的な911があります。どちらも2013年式type991のカレラSなのですが、一台は7速マニュアル・トランスミッション


参照:https://www.garagecurrent.com/car/67903/

そしてもう一台はPDKを搭載しています。


参照:https://www.garagecurrent.com/car/68447/

これは……。

非常に悩みます。ある種の「究極の選択」と言えるかも知れません。もしもあなたが実際にこれでレースをされるのでしたら、たぶん正解はPDKを選ぶことなのでしょう。これはきちんと数字に出るわけですから、よりタイムが縮められる方を選択するのが当たり前です。

しかし、ごく普通に(ってこんな400馬力もあるクルマ、そもそも絶対に普通じゃないんですけど)楽しく走りたいとしたら。

超絶の大パワーをぐりっと繋ぐその瞬間。回転しせめぎ合うクラッチ板を感じる、それはいま世界で一番幸せな足の裏かも知れない……。

それはもう、悩みはきっと深いでしょう。いっそ自分の免許がミッションインポッシブルだったら迷わずに済むのに、なんて世迷い言を吐いてしまうかもしれません。

[ライター/小嶋あきら]

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