2020-05-09

コンパクトな車体に大排気量V8エンジン。マニュアルミッションで愉しむ贅沢、アストンマーティン・ヴァンテージ

アストンマーティンは、正式には「アストンマーティン・ラゴンダ」という社名なんだそうです。高級スポーツカーを作るメーカーで、1959年にはル・マンで優勝しています。いまもWECのLM-GTEクラスに参戦し続けている、英国車メーカーとしては元気なブランドですね。



アストンマーティンとは?




昭和のスーパーカーブームの頃に出回ったカードには、アストンマーティンのV8やラゴンダも載っていたのを覚えています。が、いかんせんランボルギーニやフェラーリに比べると地味で、カードを交換したりするときにはどうしても人気薄でした。そう、こういう大人の魅力は田舎の小学生ごときにはわからなかったのです。さらにカードの裏に馬力などのデータが書いてなくて「アストンマーティンの方針により非公開」とか書かれていたのをおぼろげながらに覚えています。いや、あれはきっと当時のカード発行元が面倒くさくて調べなかったのではないかなあと、いまになって思うのですが。



また、ラジコンブームの頃に出てきた「激突!ラジコンロック」というちょっとアレな漫画には、英国人のマーク・ボランテという少年が操るアストンマーティン・ザガート(たぶんDB4GTだと思います)が登場して、シルエットフォーミュラのセリカLBターボとかと戦っていたのがなんか印象に残っています。



初代からのヴァンテージの系譜




そんなアストンマーティンから1972年にデビューしたV8は、5340ccの90°V8DOHCエンジンを搭載した高級スポーツクーペでした。出力は305hp、最高速度は270km/hと公表されています。1977年には高性能バージョンのヴァンテージも加わって、1989年まで造り続けられました。1987年に公開された007リビング・デイライツにも出ています。実に英国車という感じですね。



1993年、ヴィラージュのハイパフォーマンスモデルとして、二代目のヴァンテージがデビューします。同じ排気量のV8エンジンながらスーパーチャージャーがツインで搭載されて、エンジンは558psになりました。2トン近いボディを時速300キロまで引っ張るという、なかなかクレイジーなモデルだったようです。1999年に生産を終了しました。



そしてその後、2005年に現れたのが、今回ご紹介する三代目ヴァンテージです。



初代や二代目に比べるとコンパクトなボディで「ベイビー・アストン」とも呼ばれますが、それでも4.3リッターのV8DOHCエンジンを搭載していて車重は1.5トン超、車幅は1866mmあります。ノーマル・アスピレーションで出力は385ps、トルクは410Nmですから、二代目のようなとんでもないパワーではありませんが、まず文句なしの大パワーですね。



魅力的なエンジン、そしてマニュアルトランスミッション




搭載されているのは実はジャガー・XKのエンジンをベースに開発されたものなのですが、共通しているのは外観のみといわれるくらいに手が入れられた別物になっています。実はこれ、ドライサンプなんですよね。ウエットサンプに対してドライサンプは車体の傾きやGに関わらず安定してオイルを回すことができる、という利点を持っています。また、エンジンの底にオイルパンを持たないので、エンジンの搭載位置を下げることができます。その分だけ重心を低くできて有利です。



ただ部品点数が増えることやコストの問題、メンテナンスのこともあって市販の自動車にはあまり採用されていないものです。この辺りアストンマーティンのこだわりなんでしょうね。サスペンションは前後共にダブルウイッシュボン、FRの2WDです。



そしてこのクルマの嬉しいところは、大排気量の高級スポーツクーペなのに、ちゃんと6速MTが用意されているところです。フェラーリからも3ペダルが消えてしまういまの時代、MTが選べるというのはとても貴重なんじゃないでしょうか。





言うまでもないことですが、エンジンというものは回転数によって表情を変えますよね。例えば低回転ではどろんどろんとトルクフルな余裕の顔をしていても、カムに乗ってくると一気にワルい顔を見せてくれるとか。そんなキャラクターこそが内燃機関の楽しさというか、モーターでは味わえない悦びじゃないですか。まして大排気量のV8エンジン。マッドマックスじゃないですけど思わず崇め奉りたくなるような、きっとそんなエンジンですよ。





そしてギアを切り替えるたびに違うエンジンが味わえる、それこそがマニュアル車の愉しみだと思うんです。それは2ペダルのパドルシフトでも味わえるんでしょうけど、さらに自身でクラッチを操作するという「いま回転軸を繋いだ!」ってダイレクトな感覚が加わったところに現れるクルマ好きの桃源郷とでもいいますか、シアワセな時間ですよね。これは純粋な「速さ」とか「効率」、まして「燃費」なんていう価値観とはまったく違った次元のものではないかと思うんです。



2018年にモデルチェンジした四代目ヴァンテージは、V8ながらメルセデスAMGをベースにした4リッターのツインターボエンジンになり、さらに高性能化します。実際おそらくすばらしいのでしょう。しかしそれは果たしてそのまま魅力の向上を意味しているのかどうかはわかりません。進化した一方で失ったものもきっと、あるはずです。



その前に三代目ヴァンテージのNAエンジンを味わってみてからでも、遅くないんじゃないでしょうか。



[ライター/小嶋あきら]

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