2020.07.10

大人でないと似合わないクルマがあります。メルセデス・ベンツ280SL

乗る人を選ぶクルマ、というものがあります。
クルマはあくまでも機械で、メーカーが販売する製品です。お金を出せば誰でもオーナーになれるわけで、当然乗れます。まあブガッティ・ヴェイロンみたいにお金「だけ」では買えないものもありますけど、そういうのを除外すれば。



ただ、物理的に「運転することが可能」「所有することが可能」というのと「そのクルマに乗れている」というのはイコールでは無いと思うのですよね。



乗り手とシーンを選ぶクルマ




たとえばショーファードリブンの高級車の後部座席に坊主頭の中学生が乗ってたら、やっぱりそぐわないでしょ?



プロレスラーみたいにガタイの良いアメリカンマッチョが五人、日産マーチ、しかも丸くてかわいいあれから降りてきたら違和感ありますよね?
ドイツ軍のコスチュームを決めたちょっとアレな人がウィリス・ジープに乗ってたら……、これは単にミス・チョイスですね。



280SLとは




今回ご紹介するのはメルセデス・ベンツ、W113。280SLです。1960年代後半から1970年代初めにかけて造られたもので、コストダウンなんかとは無縁の頃の本物の高級車です。2.8リッター、ストレートシックス、170ps。ツーシーターのオープンカー。この辺りはもう「粋なクルマ」という言葉をそのまんま形にしたような、当時の憧れの的ですね、まさに。



「ベンツでな、縦眼で、ものすごいお洒落なオープンカーやねん」
「それは280SL、W113ゆうやつやないかい!」
「せやけどな、なんかチャラい若者が乗ってて、結構似合っててん」
「そうかー、ほなW113ちゃうなぁ…」



思わず最近はやりの漫才師さんのネタみたいになってしまいましたが、W113はきっとそういう「乗り手を選ぶメルセデス・ベンツ」と言っていいでしょう。





そもそもオープンカーというものは、道行く人に乗り手が丸見えです。だから乗るにはそれなりの覚悟が必要だと感じます。「人の視線に晒される覚悟」です。だいたいあんまりフォーマルな用途だとか(「即位の礼」とかは別ね)実用的な通勤の足とか、そういう雰囲気の乗り物じゃないですよね。だから乗り手もそれなりにソフトな、遊び心を覗かせた大人(「遊び心あるなぁ」なんて最近のクルマのCMとは流派の違う遊び心ね)であって欲しいじゃないですか。



「いいひとだわ」と青空をバックに麦わら帽子のワンピース乙女に笑顔を向けられる感じよりも、カクテルグラスを持ったちょっと訳あり風の麗人に「ワルいひとね…」と言われて似合うようなタイプの。時折ちょっと悪い顔で「ニヤり」というのが魅力的に映るような大人と言いますか。
って、そんなむかしの洋画に出てくるようなナイスミドルがいったい日本にどれだけ生息しておるのか、というとちょっと心許ないですけどね。



細部にもこだわりたい




そういうチャーミングな大人がオープンにして乗る。その時に握るハンドルもまた、やっぱりこだわりたい部分ですよね。たとえば今はやりの小径で太いタイプはちょっと違うんですよ。下側が一部真っ直ぐになったダイエーのマークみたいなのもね。また太いというとヤンキー仕様の太巻きみたいなやつはさらに論外です。そして真ん中にエアバッグというのも野暮ったいです。樹脂とかウッドの細い、大径のステアリングがやっぱり似合うように思うんです。金属製の枠型のクラクションが付いたタイプだと言うことありません。



乗りこなせば最高にかっこいい




「これ何人乗れるねん」「これ何キロ出る?」「高いやろ、ナンボほどした?」「リッターなんぼほど走る?」「税金高いんちゃうのん」「ガイシャはよお故障するやろ、なんで国産にせえへんねん」というような質問はすべて「ふふっ」と余裕でかわす。そう、余裕です。「ふん」じゃダメです。「へへっ」も違います。「えへっ」はますます離れます。「ふふっ」が大切なのです。
重ねて書きますが、こういうクルマを理解するには、またこういうクルマに乗って似合うには、それなりの年季と経験、経済力、ルックスなど、大人の魅力が必要です。先にも書きましたが路上の視線はストレートに刺さってきますので、それに負けない大人の力が要求されるのですね。
ちょっと手強いメルセデス・ベンツ280SL。乗りこなせばきっと最高にかっこいいですよ。



[ライター/小嶋あきら]

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